婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています

「あ、あっ……そんな……う、そ……なんで……あれは……」

 爪を噛みながら、ブツブツと呟くビビアン様。
 そんなに噛んだら、爪が痛んでしまうじゃないの。あとでメイドに念入りにケアさせなければ。商品に瑕疵を作っては価値が落ちてしまう。

 それにしても、心当たりはあるようね。

 忠義心に厚い者ほど頼もしくて厄介なものはない。メイドも主人のためだとしても犯罪に手を染めてはいけなかった。目の前の幸せに満足して手を打っておけばよかったのよ。ビビアン様もメイドも。せっかく婚約もしたのにね。すべてが水の泡。

 それも自業自得だから同情もしないし情状酌量の余地もないわ。

 今度こそ、わたしもアンジェラも一言も口を開くことも振り返ることもなく部屋を後にした。




♢♢♢

 部屋に残されたビビアン様は発狂乱になって泣き喚く。
 
「イヤー。イヤよ。行きたくない。ここから出してー。イヤー」

 断末魔のような叫びと泣き声がいつまでも部屋の中にこだました。



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