婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
わたくしは気分を変えるように席を立つと茶葉を手に取って新しくお茶を淹れ始めた。
テラスは風通しが良くて涼しい風が吹き抜けていく。天気がいい日は決まってここでお茶を飲むほどのお気に入りの場所。
新しい茶器に紅茶を注ぐと姉へと運んだ。メイドが新しいお菓子を持ってきてくれた。軽い食感のクッキーだった。
「お姉様。リリアさんの事なのですけれど」
「何かしら?」
「実はチェント男爵からこのまま教育が進まないようなら、婚約を白紙に戻してもかまわないと話があったんです。テンネル侯爵家に迷惑をかけては申し訳ないからと言われましたわ」
「それは随分思い切ったことを……」
姉は大きく目を見開いて驚いた顔をした。
それもそうだろうと思う。チェント家は男爵。テンネル家は侯爵。
普通に考えれば婚約するには身分が違う。普通なら受け入れがたいことだけれど、ブルーバーグ侯爵令嬢との婚約解消の原因になった男爵令嬢を受け入れることで責任を取ったつもりだった。