婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
 
 公衆の面前で婚約破棄騒動を起こせば穏便に内々で済まされるはずはない。

 それとチェント家は男爵ではあるものの貿易や真珠の養殖などで成功し資産家であることも幸いした。
 チェント家とも取引があったことも少なからず影響はあった。婚姻によって友好な関係を築いていけばこちらにも益があるだろうという思惑もあった。

「男爵家がそのようなことを言い出すほどにリリア嬢に手を焼いているということかしらね」

「そうかもしれません。頭をこすり付けんばかりにお願いされましたもの」

「それでどうしたの?」

「一応、男爵の申し出は受け入れました。口約束でもよかったのですが、契約として書類も交わしましたし、その方が安心だと言われましたわ」

「よほどリリア嬢の所業が心配なのね。家族に信用されないのもつらいものねぇ」

 姉は同情たっぷりに呟くと湯気の立った紅茶を口にした。

 
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