婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
 
 そういえば、平民の頃はよく子供達に声をかけられていたっけ。

 人懐っこくて物怖じしない子供は「お姉ちゃん、遊ぼう」ってよく誘ってくれていたなあ。そんな昔の光景が目に浮かんだ。そういえば、あの子達、今どうしているんだろう。大きくなっただろうなあ。

 貴族になってから一度も訪れることはなかった。貴族の生活に慣れるのに精いっぱいで、思い出すこともなかった。広場で遊ぶ子供達を見て感傷にも似た感情が心の中を過ぎっていった。

「どうしたんだ? 急に大人しくなって」

 心配そうにあたしの顔を覗き込むエドガーに何でもないと首を左右に振った。

 あたしはもう平民じゃない。男爵令嬢で次期侯爵夫人よ。立場が違うんだから。平民の子供達の事はどうでもいいじゃない。関係ないわ。 

「ちょっと、疲れちゃったかな。どこかで休憩したい」

 過去を振り払うようにエドガーの腕にしがみついた。頼られることが好きなエドガーの眼差しがとろりと甘くなる。

 そんな彼の瞳に恋をするのだ。何度も何度も。

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