婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
「さっ、フローラ行きましょう」
二人が席を立った時、侍女二人が両手に紙袋を抱えて戻ってきた。それをどこからともなく現れた騎士が受け取っていた。今までどこにいたんだろう?
広場の外には家紋のない馬車が止まっていた。
あら、いつもの立派な黒い馬車じゃない。
そういえばお忍びで家門のわからない馬車を使うこともあるって聞いたことがあった。お忍びって秘密の匂いがして、ちょっと憧れていたんだよね。
「それでは、ごきげんよう」
華麗な仕草で会釈をして二人は馬車に乗り込んで去って行った。
「なんだ、もう終わったのか。つまらん」
「やれやれ、何があったか知らんが、騒ぎは起こしてほしくないのう」
「んだ、んだ。面白かったけどな」
口々に勝手なことを言いながら、野次馬たちは散らばっていった。
♢♢♢
結局、気持ちが削がれてしまったあたしたちは食欲も失せ遊ぶ気にもなれず、それぞれの邸に帰ったのだった。
思い切り羽根を伸ばして楽しむはずだったのに。
あーあ。甘いスイーツをエドガーと食べたかったなあ。