婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
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「ただいま、戻りました」
西の宮に到着して、いつもの部屋のドアを開けるといきなりレイ様に抱擁を受けました。温かな温もりとシトラスの香りに心が満たされます。
「遅かったから、迎えに行こうと思ってたんだ」
遅い?
肩越しに時計に目をやれば約束の時間よりも二十分は早いのですが。
「やっぱり俺もついて行けばよかった。何度後悔したことか」
抱きしめる腕に力がこもります。
「大袈裟ですよ。それに予定の時刻よりも二十分早いです」
「体感時間では一時間は遅かった」
体感時間って、わけのわからないことをいうレイ様。言いたいことはわからないでもなく、一日千秋の思いで待っていたとの意味合いなのでしょう。
送り出す時も渋々でしたし、自分も一緒に行くと出発するまで粘っていらっしゃったわ。けれど仕事が立て込んでいたから断念するしかなかったのですよね。
もしもレイ様が街に出たら目立つのではないかしら。たとえ変装しても高貴なオーラは隠せないと思うわ。