婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
「ローラと一緒に暮らしているのだから、その権利は十分にあると思うんだ。ちょっと憧れてもいたしね。婚約者をエスコートするの。残念ながら一緒に学園には通えない。だから、せめて卒業まであと少しの間、送迎役を務めさせてもらえないかな?」
私の手を取ったレイ様は指先にチュッと口づけました。
頬が朱に染まり胸がドキドキしてきました。哀願されては断ることは難しい。
学園生活もあと少し。卒業してしまえば送迎もなくなる。それを思えば、レイ様の願いに甘えてもいいのかしら。
「これからもよろしくお願いします」
「よかった」
嬉しそう破顔したレイ様は再び私を抱きしめました。
シトラスの香りが鼻を掠めていき、背中に回した腕に力を込めて私もレイ様を抱き返しました。
多幸感に包まれる腕の中。
私達は言葉もなくお互いの温もりに酔いしれました。