婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
平常心を取り戻した私はレイ様の隣で、祝福を述べるために列をなす貴族達とあいさつや言葉を交わしての繰り返し。やっと人も途切れて一段落したところでした。
「ありがとうございます」
そういわれれば喉が渇きました。ずっとしゃべりっぱなしだったわ。
「じゃあ、持ってくるから、ちょっと待ってて」
軽く手をあげると人波をかき分けるようにしてドリンクコーナーへと歩いていくレイ様を見送って、一人になった私は壁際に移動して彼を待つことにしました。
ダンスを踊るカップルや談笑している貴族達をぼんやりと眺めていると
「ローラおねえちゃん」
リッキー様の声がしました。小さいながらも正装に身を包んだリッキー様は紛れもなく王子様でした。
「リチャード殿下。お久しぶりでございます」
私はカーテシーをして挨拶をしました。公式の場ですから気軽に愛称では呼べません。
「リチャード殿下って、誰? ローラおねえちゃんに、そんな呼び方を許した覚えはないよ」
「……」
随分と大人びた言葉遣いを覚えられたようです。