婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
 
 リリア・チェント男爵令嬢⁈

「かわいい。こんなところに子供が。ねえ、ねえ。僕の名前はなんていうの?」

 いきなり、リッキー様の前にしゃがみこんで話しかける男爵令嬢に唖然としました。
 私のドレスをギュッと掴んだリッキー様は少し怯えた表情に見えました。

「申し訳ありませんが、こちらは王太子殿下の御子様でいらっしゃいます。軽々しく話しかけるのはいかがなものかと思います」

「へえ。小さくても王子様なんだ。かわいい。別にいいじゃないの。子供なんだし。それにあたしって子供好きされるのよ。近所では大人気だったんだから」

 いえ、そういうことではなく。

「ねっ。お姉ちゃんと遊ぼ」

「やだ」

 怯えた顔はそのままにリッキー様が拒絶しました。
 貴族の令嬢とはいえ、見ず知らずの人に声をかけられて従うわけはありません。

「もしかして、照れてるのかな? たまにいるのよね。ホントは遊びたいけど、恥ずかしがってもじもじしている子」

 勝手に解釈して悦に入っている彼女。

 お相手は王族。気軽に話しかけてよい存在ではないのに。常識は通じないのかしら。


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