婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
連れていかれまいと踏ん張って嫌がっている様子に我慢ができずに声を荒げてしまいました。
「なによ。ちょこっと遊ぶだけじゃないの。すぐにフローラさんの所に連れてくるわよ。だから、安心して」
「そういうことではありません」
勝手に連れ去ろうとするリリア様を阻止しようとリッキー様を抱きしめました。話が通じないので体で止めるしかありません。見下ろす私と見上げるリリア様。バチッとにらみ合う私達。
「どうしたの?」
そんなさなか、不思議そうに問うレイ様の声が降ってきました。
飲み物の入ったグラスを両手に持って佇んでいるレイ様の姿に安堵の息が漏れました。
リッキー様の手首をつかんでいるリリア様とリッキー様を抱きしめている私。異様とも思える光景。
事情を説明しようと口を開きかけた時
「きゃあ。かっこいい。王子様。本物の王子様だわ」
リリア様が黄色い声をあげました。何故だか瞳がハート形になっています。
「ちょうどいいわ。レイニー殿下でしたよね? あたしとリチャード君と一緒に食事しませんか? ねっ、それならいいでしょう? フローラさん」
素早く立ち上がったリリア様は名案とばかりに手をポンと叩きました。