婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
 
 訳の分からないレイ様は面食らったような顔で私とリリア様とリッキー様を交互に眺めて

「どちらのご令嬢だろうか」

 両手に持っていたグラスを給仕に預けて困惑気味に尋ねました。

「あたし、リリアって言います。これからも仲良くしてくださいね」

 ニコッと笑みを作るとぺこりと頭を下げて挨拶をするリリア様。

 貴族のマナーがすっかり抜け落ちてしまっています。非常識な挨拶にレイ様は無表情で固まっていました。ここには貴族しかいないはずなのに。家名も名乗らず砕けた言葉遣い。レイ様も返事に困りますよね。

「ということで、レイニー殿下も一緒に行きましょう」

 リリア様はレイ様の反応など気に留めずグイグイと攻めてきます。どこまで図々しいのでしょう。
 そして、リッキー様の手を引くと強引に連れ出そうとしました。

「ちょっと、お待ちください」

「これ以上はお止めください」

 同時に別々に発せられた声。

 リリア様とリッキー様の身体の間に自身の身体を滑り込ませたのはエイブでした。
 ここがギリギリ限界だったのでしょう。

 話の通じない彼女に辟易して対処に苦慮しているところだったので助かりました。

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