婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
 
 身を翻して去って行く姿を皆が見送っていました。やがて、王太子殿下が扉の前に立つと演奏がぴたりとやみました。そして殿下の一声が会場中に響き渡りました。

「騒がせてしまったようですまなかった。せめてもの詫びにとっておきのワインとスイーツを届けさせよう。本日は学園の卒業パーティーだ。卒業生を祝い、大いに楽しんでくれ」

 王太子殿下の心遣いに会場が湧き歓声で満たされました。
 退出されたあとは今まで通りの会場の空気に戻りましたが、そんな中でもヒソヒソとした冷ややかなささやきが漏れ聞こえてきます。先程の出来事がお酒の肴になるのかもしれません。
 
「ローラ。大丈夫?」

「はい。私は。ただ上手く立ち回れなかったのが残念で、申し訳なくて」

 案じるような表情でドリンクを差し出したレイ様からグラスを受け取りました。

「それを言うのは俺もだよ。何もできなかったし、助けにもならなかった。ごめんね」

「そんな……レイ様は事情を知らなかったのですもの。謝らないでください」

「そうよ。常識のない人には何を言っても理解してもらえなかったと思うわよ」

 私達の会話に口を挟んできたのはディアナでした。

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