婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
 
 髪を振り乱して泣きじゃくるリリアに冷めた目を向ける。父は聞き分けのない彼女に呆れたのか白けた目で見ていた。

 そんなに離れたくないなら、侯爵夫人教育を真剣に受ければよかったのだ。
 真剣に貴族社会に溶け込めるように努力すべきだったのだ。今頃になって、心を入れ替える、なんて遅い。

 卒業時にはある程度のマナーも教養も習得しておかなければいけなかったのに。そのために、どれだけ侯爵夫人が心を砕いてくれたのか。
 教育に費やした時間を無駄にしてしまったのだ。本当に侯爵家に申し訳ない。
 
「マギー、サント。すまないがリリアを部屋へ連れていってくれるか」

 父は壁際で待機していた二人に声をかけた。

「それとマギー、リリアの荷物の準備を頼む」

「承知いたしました」

 テーブルに突っ伏したまま、動かずいやいやをするリリアを力ずくで立たせると二人に両脇を抱えられるようにして出て行った。

 ドアが閉まるのを見届けるとドッと疲れが押し寄せた。

 これで一仕事終わったのか。やれやれだ。修道院へ送り出すまで監視を強化しなくてはいけないな。引っ越しを進めている最中だから、人が手薄になることも考えられる。最後まで、気を抜けないな。

「父上。話があるのですが、ちょっといいですか?」

「ああ。なんだ?」
 
 疲労の濃い表情を見せる父にある提案をした。

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