婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
め、目の前に王子様がいる‼
学園の停車場で遠くから眺めるだけだった、王子様が……そう思ったら声をかけずにはいられなかった。
全てが完璧な形をもって配置された端正な顔立ち。すらっとした長身。スマートな立ち姿。
眩しいくらい光輝いているわ。
近くで見るとなお一層、美々しさが際立っているのがわかる。
こんな素敵な人と結婚できるなんてフローラさんてば、なんてラッキーな人なの。
あたしもお近づきになりたい。
『ちょうどいいわ。レイニー殿下でしたよね? あたしとリチャード君と一緒に食事しませんか? ねっ、それならいいでしょう? フローラさん』
フローラさんの許可があれば、王子様ともリチャード君とも仲良くできるでしょ。一挙両得。両手に花。名案よね?
『どちらのご令嬢だろうか』
あ、そうか。王子様はあたしの名前は知らないのか。
なら、自己紹介しなきゃね。まずは、あたしの名前を知ってもらわなきゃ、先に進まないもんね。
えーと、挨拶ってどうやるんだっけ?
何度も練習したはず。えーと、思い出せない。
こんな時に限ってやっと詰め込んだ知識が抜け落ちてしまって頭の中が真っ白。
どうしよう。
王子様はあたしの返事を待っている。もうしょうがない。