婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
『誰?』
もう邪魔しないでよ。時間はどんどん過ぎていくじゃないの。あたしはお腹すいてるの。三人で美味しく料理を食べたいのに、いつになったら食べられるのよ。
『リチャード殿下の侍従をしている者です。これ以上無礼な行為をなさるのでしたら狼藉と見做しますので、大事にならないうちに今すぐ手をお引きください』
侍従って、付き人みたいなもの?
うちには執事がいるけど、そんな感じ?
お小言を言う役目の人だよね。この人は怒らせたらいけない人?
あたしは上目遣いで目をウルウルさせてお願いしてみた。
『狼藉って、ただリチャード君の遊び相手になってあげようとしただけなのに……』
エドガーはこれに弱いんだよね。
どうだ、これでイチコロのはず。と思ったけど、反応なし、どころか睨みつけてくるし、どうすればいいの?
思い通りにいかなくて地団太を踏みたくなる。もう、諦めた方がいいのかもしれないけど、ここまで来て引き下がるのも癪に障る。
『どうしたのだ』
どれが最善なのか考え込んでいるとやけに威厳のある第三の声が聞こえた。
なんなのよ。もう。
『ちちうえー』
リチャード君が走り出して第三の声の主の懐に飛び込んでいった。