婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
 
 夢の世界に浸っていると腕を取られた。お義兄様が鬼のような形相であたしを睨んでいた。

『帰るぞ』

『へっ? まだパーティーは終わってない』

 会場では軽快な音楽が流れていた。
 ダンスに興じているカップル達や談笑してるグループもいるのに、それに、エドガーに会っていない。

『エドガーを見つけないと……』

『そんなことをしている場合か。人前でどれだけ恥をかいたと思っているんだ。失態を犯しておいて、よく平気でいられるな。とにかく帰るぞ』

 お義兄様の地の底を這うドスのきいた声を浴びながら、あたしは馬車に乗せられて強制的に帰宅させられたのだった。

 料理食べられなかった。お酒も飲みたかったのに。リチャード君とも遊べなかった。
 エドガーはどうしてるだろう。今頃、あたしを探してるんじゃないかな。悪いことしちゃった。誰かに伝言頼めばよかった。お義兄様がせかすから。明日、手紙を書いて謝ろう。


 仄暗い沈黙が支配した馬車の中でぐるぐるといろんな思考が回っていた。

 能天気で無知なあたしは明日もいつもと同じ朝が来ると思っていた。


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