婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
程よく弾力性のあるベッドはふかふかで寝心地が良くて、シーツも滑らかで肌触りがいいし夏はひんやりとして冬は暖かい。毛布も布団も季節によって厚さや素材が違う。快適な睡眠を得られるように気配りがされていた。
食事だって三食きちんと食べられる。おまけに美味しいおやつまである。今はないけど。ケーキ食べたいな。甘いもの欲しい。すっかり贅沢になれてしまった。
平民の時の暮らしと比べれば、段違いに恵まれた生活をしている。
硬くて動くたびにキシキシと軋むベッドと薄い毛布。部屋も狭くて粗末な家具がいくつかあるだけで、すきま風が年中入ってくる。食べ物も固いパンに見切れ品のしおれた野菜のスープ。たまにお肉が入っていればごちそうだった。
父が生きていた頃はまともな生活をしていたと思う。
家も一軒家で食事だってちゃんとしてた。
パンやスープの他に肉や魚も食卓に上がっていたのを覚えている。
父も母も優しくて笑顔が絶えない明るい家庭だった。けれど、稼ぎ頭の父が亡くなると生活が一変した。