婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
家賃が払えなくなると借りていた一軒家を追い出され、やっと見つかった家は古い長屋の一室。その日から母と身を寄せ合うように生きてきた。
貧乏だけど、何もないけど、それでも必死で生きてきた。働き過ぎて身体を壊した母が亡くなって途方に暮れていた時に父の生家であるチェント男爵家に拾われたのだ。
あたしは運がよかったのだと思う。
あのままだったら野垂れ死にしていたかもしれない。
養女にしてもらい男爵令嬢として貴族の仲間入りをして、学園でエドガーに出会い恋に落ちた。婚約者がいたけど、婚約はスムーズに解消されて、あたしが婚約者になった。
上手くいきすぎるくらい上手くいきすぎて、有頂天になっていたのかもしれない。
安穏とした生活に慣れ切って、甘やかされて、それで世間を渡っていけると根拠のない自信に満ち溢れていた。
覆水盆に返らず。
取り返しのつかないことをしでかした後では、どうにもならないことにあたしはまだ気づかなかった。