婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
「卒業パーティーでの騒ぎの件だ。お前の愚行で事業にも影響が出ている。婚約解消の件ではさほど影響は出なかったのだがな。今回はそういうわけにはいかなかったようだ」
「どういうこと?」
なんなの? 何が起きているの? あたしの頭の中はパニック状態だ。
「どこの世界に王族にぞんざいな扱いをする貴族がいるというのか。しかも、何の面識もない末端の男爵令嬢が馴れ馴れしく殿下に話しかけるなど。それだけでなく、嫌がる殿下を無理やりに引きずり出そうとするとは。貴族の風上にもおけぬ所業だと思うがな」
「そ、それは……照れて、恥ずかしがっていると、思ったからで」
「初対面のどんな人物かもわからない人間について行く者などいないだろう? 声をかけられれば知らない人間について行ってもよいと両親に教えられたのか?」
「いえ。ついて行くなと言われてました」
「それが当たり前のことだ」
「あっ、でも。レイニー殿下と一緒に行くつもりだったから、大丈夫では?」
「そういうことではない」
押し問答を続けるあたしとお義父様。噛み合うようで噛み合わない。お義父様の声がだんだんと冷たくなっていき表情もなくなっていった。
北風のような寒々としたとした空気が流れていく。