婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
テンネル侯爵夫人side③
サアァァァと雨のようにシャワーヘッドから水が放出される。
放たれた水の重みで葉っぱや花びらが揺れる。水玉が滴り落ちてゆくたびに植物たちが生き生きとしていくようだった。
弧を描く水飛沫が虹を作り出して幻想的な景色が広がった。遠くでしか見られない虹が目の前に現れる。
それだけでも小さな祝福が与えられたような幸福感を感じられた。
広い庭園は水やりだけでも重労働だと知った。
庭師に感謝だわ。
何事においても使用人がいてわたくしたちは生活ができている。なんでも当たり前だと思ってはダメね。まるで悟りでも開いたかのような心境になって、わたくしはクスリと一人で笑いを漏らした。
習慣化し始めた水やりはいい気晴らしにもなった。狭い範囲だけしかできないけれど、自然と触れ合うことで癒され心が洗われていくように感じる。
水やりを続けているとメイドの声がした。