婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
「奥様。レッシュ侯爵夫人がお見えになっておりますが、どのようにいたしましょう」
「お姉様? 会う予定はなかったはずよね。今日は用事もないし、いつもの場所にお通して」
天気のいい日はテラスでお茶をするのが定番だから、そこで待っていてもらいましょう。先触れもなしに訪れるなんてお姉様にしては珍しいわね。
外出していなくてよかったわ。気分転換に買い物に出かけようかとも思っていたから、思いとどまって正解だった。わたくしは水を止めてホースを片付けていた。
「べス」
片付けが終わったところでお姉様が姿を現した。
「お姉様。テラスでお待ちのはずでは?」
「庭園にいると聞いたものだから来てみたの。いけなかったかしら?」
「いえ、それは大丈夫ですけれど。急の訪問なんて驚きましたわ」
お姉様は精緻な刺繍が施された純白の日傘を差して優雅に微笑んでいた。
相変わらずきれいだわ。