婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています

「一人より二人。わたくしはお姉様と一緒で嬉しいですわ。遠慮なくお召し上がりくださいね」

 朝夕は家族で食事をするけれど、昼食はそれぞれの所用でバラバラに取ることが多い我が家。ここ最近は味気なさを感じていたから、一人でないことは有難かった。

 たわいないおしゃべりをして食事を楽しむ。鬱々とした気分を抱えていたわたくしは久しぶりに笑うことができた。

 食事も終わりお茶の時間。
 わたくしが選んだとっておきの茶葉で淹れた紅茶は美味しい。ほんのりとした爽やかさを含んだ紅茶を堪能する。
 
「お姉様。時間を巻き戻したいと願ったことはありませんか?」

「時間を巻き戻す? そうねえ。もう一度やり直したいと思ったことは何度かあるわ。後悔したことがいくつかあるの。ちょっとしたことだけどもね」

「よかった。わたくしだけではないのですね」

 後悔先に立たず。

 悔やんでも悔やみきれないあの日の出来事。
 卒業パーティーでのリリアさんの愚行がテンネル侯爵家に大きな影を落としてしまった。

 
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