婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
あの日以来、わたくしはお茶会や夜会には参加していない。
この間までシュミット公爵家のスキャンダルが社交界を席巻していたのに、リリアさんのスキャンダルが上書きされて今ではすっかり時の人となっているらしい。
「わたくしもね。落ち込んでしまったのよ。しばらく立ち直れなかったわ」
「お姉様が? どうしてですか?」
「わたくしなりに頑張ったつもりだったのに、侯爵夫人教育の成果が出なかったのですもの」
目の前には遠い目をした姉がいた。
少しずつ良くなっていたから希望の光が見えてきたところだったのに、一瞬にして水泡に帰してしまった。姉には申し訳ないことをしてしまったわ。
「わかります。実践不足はわかっていましたが、よりによって王族と揉め事を起こすとは思わなかったわ」
「本当に、そうよねえ。わたくしも聞いた時は吃驚したもの」
「礼儀作法もまだ怪しい段階なのに、何故王族の方々と関わってしまったのかしら。彼女は男爵令嬢、普通は接点なんてないわ。それを……」
頭が痛くなってきたわ。
事の経緯はチェント男爵から聞いた。その時のなんとも気まずい空気。お互い居た堪れなかったわ。
「エドガーはどうしていたの? そばにいなかったの?」