婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
「たまたま偶然が重なってタイミングが悪かったのね。それにしてもある意味アグレッシブだわね。物怖じしないことは悪いことではないけれど、慎重になって欲しかったわ。お相手は王族ですもの。言葉遣いも態度も気をつけてほしかったわね。学習したことを思い出してもらえれば何とかなったかもしれないのに。残念だわ」
「リチャード殿下は嫌がっていらしたそうなので、その時点で謝罪していたら大事にならなかったのに」
引き際を間違えた結果。
「リリア嬢は殿下の遊び相手になりたかったようだけれど、殿下は拒否なさったのよね? 彼女にとっては善意かもしれない。だけれども、人の気持ちに鈍感すぎるのも考えものね」
王族と知って遊び相手になろうなんて烏滸がましい。そのことに気づかない彼女に失望してしまった。
貴族社会は単純ではない。階級、縁戚関係、交友関係、仕事関係などしがらみも多く関係も複雑だ。それを理解しないと足元を掬われることになりかねない。ましてや己の身分も考えず王族に近づくなんて愚かだわ。
礼儀を弁えているならまだしも、平民のような気安い態度では不興を買うのは当然の事。
巻き戻せるなら、巻き戻したい。卒業パーティーが始まる前に。それが叶うのならどんなにいいか。
「どんなに願っても時は戻せませんものね。お姉様、実はリリアさんとの婚約は白紙に戻ったんです」
「え? そうなの?」
「はい。男爵家から、侯爵家に迷惑をかけるわけにはいかないとの申し出を受けて、こちらも承諾しました」
「それは、致し方ないことかもしれないわね」
姉は納得した顔で紅茶を口にした。