婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
領地を抱えた貴族の身では移住をするのも難しい。
領地経営も上手くいき、領民との関係も良好だ。慕って信頼してくれる領民達を自分達のエゴで責務を放り出すわけにもいかなかった。
俺が相談した時は、父は領地の事を考えて随分と悩んでいた。先祖代々、受け継いできた領地と爵位を捨てるのは忍びなかったのだろう。
夢は夢だと叶えたくとも叶うはずのない夢だと半ば諦めて胸におさめて生きてきたのだから。
しかし、リリアの王族への不敬や無礼なふるまいは社交界に知れ渡ることとなり、日に日に悪化して我々は針の筵状態に陥ってしまった。
事業が成功しているからといっても所詮は男爵家。上に睨まれれば商売はすぐに立ち行かなくなる。それを思えば早々に手を引いた方が被害が少なく済むのではないかと考えた。
それに、義妹の失態は我々保護者の責任でもある。
潔く爵位を差し出すことが男爵家として責任を取ることにもなるだろう。
爵位と領地を返上すれば王領となる。評判の悪い男爵家よりも王家で管理してもらう方が領民のためにもなるのではないかとも思ったのだ。
考えに考えた末、それらが決め手となり父も賛成してくれたので、すぐに実行に移した。