婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
♢♢♢
ガリガリッ。
ミルの取っ手を慣れた手つきで回す音が聞こえています。
レイ様がコーヒー豆を挽いている姿を見つめている私。
疲れたと言っていたのに、疲れはどこへやら。嬉々として作業に没頭しているレイ様。
やがて挽き終わると容器に移し替えてゆっくりとお湯を注ぎ始めました。ふんわりと香ばしい独特の薫りが立ち上りこちらにも漂ってきました。ポットに落ちる雫にしばし心を奪われて静かな時間が流れていきました。
ここはレイ様の私室。
本棚とコンソールテーブル、ソファセット。必要最小限度に置かれた家具。至ってシンプルな室内はレイ様らしい。そこに新たに加わったバーカウンター。レイ様お気に入りの場所となっています。
普段使いの応接室は最初に訪れた頃よりも家具や装飾品も増えて華やかになっていました。定期的に品物を入れ替えが行われているようで、目を楽しませてくれています。侍女達の心遣いに感謝です。