婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
時間がある時には私室で手ずからコーヒーを淹れてくださいます。これは私にだけにしか味わえないもの。贅沢なひととき。
レイ様はブラックで私はミルクを少し入れて、まずはコーヒーのかぐわしい薫りを楽しんでから口にしました。
「おいしい」
「うん。上出来だね」
レイ様は自分が淹れたコーヒーを飲むと満足げに頷いています。
クランベリーのマフィンを頂きながら隣に座るレイ様を盗み見る。美麗なな横顔にドキッと胸が高鳴って慌てて顔を逸らしてしまいました。
レイ様の美貌に未だに慣れなくてドキドキしてしまうわ。
「どうしたの?」
そんな私の気持ちなど知らないレイ様は暢気に話しかけます。
「いえ。なんでもありません」
「それならいいけれど。ところで荷造りは進んでる?」
「はい。ほとんど済んでおります」
「良かった。三日後には出発だからね。急なことでローラにも負担をかけてしまうことになってごめんね」
「いいえ。驚きはしましたけれど、負担だなんて思っていませんわ。チェント領は港町だと聞いていますので楽しみにしているんですよ。不謹慎かもしれませんが」
理由が理由だけに複雑な心境にもなります。