婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
二杯目のコーヒーとマフィンとレイ様。
ゆったりと流れて行く時間にこの上もなく幸せを感じているとふわりと抱き上げられて、レイ様の膝に乗せられて腕の中に囲われてしまいました。
いつもの行動。いつもの習慣。いつもの香り。
慣れとは恐ろしいもの。最初の頃のように驚くことも逃れようとしていた時とは全然違う。今では日常の一部のように受け入れて、レイ様の息遣いや密着する体と体温が私に安心感を与えてくれます。
「結婚まであと半年か。長いな」
頭上から溜息交じりにレイ様の声がします。
「半年は長いように感じるかもしれませんが、きっとあっという間ですわ」
「そうかもしれないけれど、やっぱり長いなあ。でも、諦めなくてはならなかったことを思えば、半年くらいは我慢するべきか……」
「諦めるって?」
レイ様がふと漏らした言葉に引っかかりを感じて顔を上げました。「あっ!」と小さく声をあげて気まずそうに顔を逸らしたレイ様。
一体、何があったのでしょう?