婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています

「覚えていないって?」

 何のことだかサッパリわかりません。いつ、レイ様にお会いしたのかしら? どう考えても覚えがなくて、まじまじとレイ様を見つめてしまいました。

「金紫珠褒賞の授与式って言ったらわかるかな?」

「あっ!」

 思い出しました。
 あの時。

「思い出してくれた?」

「はい。ですが、緊張しすぎていたせいか、あの日のことはあまり覚えていなくて」

 そう、あの日。
 王城で行われた授与式。

 初めての王城。初めての栄誉ある賞の授与式には、貴族の重鎮の方々や国王陛下並びに王族の方々が参列して挙行されました。

 豪華な会場に圧倒されて、きらびやかな雰囲気にのまれて、カチコチに固まっていた私。

 初めてづくしの中、表彰が無事に終わって王族の方々から祝辞を頂いたのは覚えているのだけれど、極度の緊張状態だったためか、朧げにしか記憶になかったのです。
 
「そうか。うん。緊張するよね」

 覚えていないと知って落胆したレイ様でしたが、気を取り直して話を続けました。

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