次の春に
「…どうしてくれんだよ。」
「こんな手紙よこしやがって。LIKEがLOVEになっちゃったじゃねーか。」
「なあ、多嘉。お前が嫌いって言ってたお父さん、こんな立派な墓建ててくれたぞ。」
「葬式の日には、お前は宝物だったってたくさん泣いてた。愛されてたんだな。親不孝もいい加減にしろよ。」
「俺さぁ…人は死んだら無になる、それだけだって思ってた。」
「シャボン玉みたいに壊れたら消えてなくなる、ただそれだけだって。」
「でも…今は終わった後の世界があったらいいのにって思う。」
「あの日、火葬場から見えた多嘉の煙が空に上がって空気になって、今、見えないだけでそこにいてくれたらいいのにって思う。」
「だって俺、お前にまだまだ言いたいことがたくさんあるんだよ。」
「…何より寂しいよ。」
「なぁ、多嘉。」
「お前の言う次の春っていつ?」
「また言うねって、デートのこと?好きってこと?」
「分かりづらいんだよ、お前の手紙。バーカ。」
「…返事しろよ、多嘉。」
「なあ」
「多嘉……返事、しろよ…」
「…」
「…ハー、もう泣くの疲れた。はは、帰るわ。」
「またな、多嘉。」
「…」
「愛してるよ。多嘉。」
「私もだよ、センセー」
「…!」
「…多嘉?」
「…」
「…やっぱり、海行こうか。」
「うん」
「卒業祝いに、お前の好きなアイスもつけてやるよ」
「うん」
「多嘉」
「卒業、おめでとう」