39回目の3月9日
私、本当はわかってる。
このタイムリープは、私がリトを止めるためのものなんだって。

リトを止められない限り……桜の樹の下でひとり泣くあの卒業式からは、1日も未来に進めないんだって。


わかってたけど、これまでの38回、私は一度もリトと話さなかった。
話すのが怖かった。

異国のために命を捨てようとするリトが、まるで話の通じない宇宙人にでもなってしまった気がして。

だけど。


「おかえり」


2月7日の夕方。リトの家の前で待ち伏せている私を見て、リトは驚いた顔をした。

「ハル……どうしたの?」
「話をしようよ、リト」


これ以上、同じ1ヶ月を延々と繰り返すのはもうたくさんだ。
私は、未来に進みたい。
変わらない友達との会話にも、決まった日に振る大雪にも、見覚えのあるテレビ番組にも、新作が出ないコンビニスイーツにも、もう飽き飽きしているんだ。


「私は絶対に、アンタを止めてみせるから」

「……だったら」


リトはにかっ、と笑う。
久々に見る、リトの満面の笑みだ。

「俺は全力で、ハルに俺の夢を認めさせてやるよ」
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