39回目の3月9日
1ヶ月間、私たちは毎日話をした。


「見てよ。この人は、世界中を回って戦場でボランティアをしてるんだって、すごいよね?」

「ふーん……」


時にはテレビを見ながら、リトの話を聞かされたり。


「だから!! それがリトの独りよがりだって言ってんの!! 
だいたい、そんなフンワカホンワカした性格で、戦地で生きていけるわけないでしょ!?」

「やってみなきゃわかんないだろ!?」

「やった挙句死んだらおしまいでしょうが!!」


時には激しく言い争って。


「ハル……手繋いでいい?」

「嫌だ」

「繋いでください。お願いします」

「アンタが折れるなら繋いでやってもいい」

「……ゆびさきだ」

「却下。……って、結局勝手に掴んでるし、もう」


時には少しだけ、甘い雰囲気に浸かって。


「……リトさぁ、タイムリープって知ってる」

「あぁ、戦場ものでもあるね。敵を倒すまでリープが終わらないやつ」

「あれ、本気で楽しめるのはせいぜい5回目までだから。6回目以降はただただ繰り返しの日常にイライラするだけだから。

もしリトが将来タイムリープすることがあったら、せいぜい早く抜け出せるように頑張っってね」

「何目線のアドバイスなの、それ」


はは、と笑うリトの胸に、私は体を預けた。


「あぁ、でも万が一リトが死にかけて、その瞬間タイムリープが始まったら、一生死なずに済むね?」

「嫌なこと言うなぁ」

「リトが死ぬよりずっと良いよ」


私は静かに笑った。

今日は3月8日。

明日、私たちは高校を卒業する。

39回目のタイムリープも、終わる。

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