39回目の3月9日
3月9日。
朝起きてリビングに向かうと、『今年の桜はやたらとせっかちですね』と、ニュース番組のキャスターが笑っていた。
「なんだか生き急いでいるみたい。
卒業シーズンにピッタリ重なったのは喜ばしいことですが」
このコメントを聞くのも、39回目だ。
そして、きっとこれが最後になる。
※※※
「お疲れさま」
卒業式を終えると、校庭の桜の木の下でリトが待っていた。
「こういうときは、『卒業おめでとう』じゃないの?」
「えぇ? だって、他人事みたいじゃん。俺も卒業するのに」
「なんでもいいけどさぁ……」
優しい風が枝を揺らす気配に、私は目線を上げた。
頭上には、白や薄紅色の花を数えきれないほど咲かせる、満開の桜があった。
「春だねぇ」と、リトが柔らかな髪を揺らして告げる。
……そういえばこの桜は、39回見ても飽きないな。
38回過ごした、3月9日。
桜から《桜誉自衛官》を連想してしまい、春からのリトを思い、わたしは1人で泣いていた。
散々泣いて涙が枯れると、頭上を見上げ、咲き誇る桜の美しさに見惚れた。
まるで、桜が私を慰めてくれているようだった。
そして、今、39回目の3月9日。
桜をぼんやりと見上げる私に、リトは尋ねる。
「ハル、怒ってる?」
「怒ってる」
きっぱりと告げる私。
「馬鹿じゃないの何考えてんの脳みそ取り替えてもらえこの宇宙人、って思ってる」
「宇宙人……」
困ったように笑うリトを、私は真っ直ぐに見据える。
「思ってるけど、……仕方ないから、認めてあげる」
朝起きてリビングに向かうと、『今年の桜はやたらとせっかちですね』と、ニュース番組のキャスターが笑っていた。
「なんだか生き急いでいるみたい。
卒業シーズンにピッタリ重なったのは喜ばしいことですが」
このコメントを聞くのも、39回目だ。
そして、きっとこれが最後になる。
※※※
「お疲れさま」
卒業式を終えると、校庭の桜の木の下でリトが待っていた。
「こういうときは、『卒業おめでとう』じゃないの?」
「えぇ? だって、他人事みたいじゃん。俺も卒業するのに」
「なんでもいいけどさぁ……」
優しい風が枝を揺らす気配に、私は目線を上げた。
頭上には、白や薄紅色の花を数えきれないほど咲かせる、満開の桜があった。
「春だねぇ」と、リトが柔らかな髪を揺らして告げる。
……そういえばこの桜は、39回見ても飽きないな。
38回過ごした、3月9日。
桜から《桜誉自衛官》を連想してしまい、春からのリトを思い、わたしは1人で泣いていた。
散々泣いて涙が枯れると、頭上を見上げ、咲き誇る桜の美しさに見惚れた。
まるで、桜が私を慰めてくれているようだった。
そして、今、39回目の3月9日。
桜をぼんやりと見上げる私に、リトは尋ねる。
「ハル、怒ってる?」
「怒ってる」
きっぱりと告げる私。
「馬鹿じゃないの何考えてんの脳みそ取り替えてもらえこの宇宙人、って思ってる」
「宇宙人……」
困ったように笑うリトを、私は真っ直ぐに見据える。
「思ってるけど、……仕方ないから、認めてあげる」