囚われの令嬢と仮面の男
9.姉弟と監視の目
床に広げた栗色の髪束は、元どおり引き出しに仕舞い鍵を掛けておいた。
アレックスは私の動作を見つめながら怪訝に眉を寄せ、「正気ですか?」と尋ねた。
「だいたい花壇を掘ってなんになるんです? まさか銃がそこに埋まっているとでも?」
「そうじゃないわ。ただ、掘らなければいけないの」
「意味がわからない」
アレックスは私の意向が変わったことに不満を感じているようだった。
「……じゃあ。地下の男のことは諦めるんですね?」
「違うわ、そうじゃない!」
首を振って強く否定すると、じゃあどうして、と弟の目が真剣に私を問い詰めた。
「……これは彼、エイブラムが考えていたことなの。彼は私を屋敷から攫って遠ざけている間に、裏庭の花壇を掘り起こそうと考えていた。きっとなにかが埋まっているのよ」
「なにかって、なんですか?」
「わからない。けどそうした上でお父様に彼を出すよう、説得するつもりよ? 大丈夫、きっと上手くいくわ」
ね、とアレックスの腕に手を添えて協力を申し出ると、弟は不承不承ながらも「わかりました」と返事をした。