囚われの令嬢と仮面の男
 あの花壇になにが埋まっているのか、決してわからないわけではなかった。ある程度の予想はしていたが、それは考えたくもない結果だ。

 けれど、エイブラムがやろうとしていたことなら、私が引き継ぐべきだと思った。

 鋼色の鍵を元あった絵画の裏に隠し、私たちはお父様の書斎を出ることにした。扉を開けた真鍮の鍵も元の場所に仕舞った。

「書斎に(あれ)がないのなら、普段からお父様が持ち歩いているのかもしれませんね?」

「確かに……その可能性があるわね」

 いったんアレックスの部屋に戻った侍従に、土を掘るシャベルを準備してもらうため、私たちは彼の部屋へ向かうことにした。

 廊下を歩きながら腕を組み、隣りでなにかしらを考え込む弟を横目で確認する。

「手伝ってくれてありがとう、アレックス」

「……え」

「正直、私はあなたにもクリスにも良く思われていないと思ってたから……こうしてゆっくり話せるのが嬉しいの」

 アレックスが口を半開きにしたまま、目をパチクリさせた。

「良く思われてないって……僕、姉さんになにかしましたっけ?」
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