囚われの令嬢と仮面の男
「大人しいと思っていたが、とんだじゃじゃ馬だったな」

 冷めた声だった。一瞬、不気味に笑うのかと思っていたが、男の声に怒りが滲んでいた。

「さっき言ったことを少しだけ訂正する。キミには危害を加えないと言ったが、やむを得ない場合には気絶させるぐらいの措置はとることにしよう」

「……っえ、」

 そのままベッドへと腕を引かれ、そこでドン、と背中を押された。

「きゃっ!」

 悲鳴をあげて転んだ私を、仮面の目が冷たく見下ろしていた。

「マリーン、キミはここで暮らすんだ。いいな?」

 男は即座に背を向け、扉のハンドルを掴むと手前に引いた。そのまま扉の奥へと消えて唯一の出口が閉ざされる。

 ガチャガチャ、と施錠される音をどこか放心した気持ちで聞いていた。

 ***
< 37 / 165 >

この作品をシェア

pagetop