囚われの令嬢と仮面の男
4.脱出するために
男との会話から、あらかた共犯者の目星はついていた。ただ理由がわからない。男に問いただしたところで教えてはもらえないだろう。
だから自分自身で確かめる。
なんとかあの男を出し抜いてここから脱出する、そして共犯者だと思われる"本人に"直接聞きに行くのだ。
**
「マリーン……っ、マリーンっ」
青々とした生垣の向こうから、ささやき声が聞こえた。私以外の誰かに見つからないよう、声を潜めながらも、気づいてほしい気持ちが語気に現れていた。
「っえ、イブ!? どうして?」
うっかり声を上げた自分にハッとし、周辺を見回す。今は使用人たちとかくれんぼをしている最中で、幸い側には誰もいなかった。
つい先日、きちんと修繕された生垣に、また小さな穴があいていた。
前ほど大きくはないけれど、子供ひとりならじゅうぶん通り抜けられる穴で、そこからイブが顔を覗かせている。
どうやったの、と尋ねると、イブが同じ施設で暮らす仲間とやったのだと言っていた。外側から刃物を使って毎日少しずつ切っていたらしい。
細かい小枝に洋服が引っかからないよう、気をつけて穴を通り抜けた。