囚われの令嬢と仮面の男
紙袋をひとつ抱えたエイブラムが入ってきて、胸のすく思いがした。彼の存在を目でとらえ、自分でもわかりやすいほど安堵していた。
あの仮面がないだけで、エイブラムは黒いフードをかぶっている。
「腹が減っただろう、すぐに支度をする」
テーブルに紙袋を置き、エイブラムが中から薄いパンやソーセージを取り出した。戸棚をあけ、木製の皿とコップ、カトラリーを並べている。
「まだいいわ。夕食よりも話をして」
「……なら、準備をしながら話す。途中でキミのお腹が鳴るかもしれないからな」
「っな」
その物言いにカチンときた。
「デリカシーのない人ね! レディに向かってその言い方はどうなのかしら!」
彼に近づいて非難した。腕を組んだままで睨みあげると、どういうわけか彼が口元を綻ばせた。優しい笑みを見て、ポッと胸が熱くなる。
「な、なによ?」
「マリーンが……そうやって感情を見せてくれると安心する」
え……。
いまいち意味を理解できず、言葉が出なかった。
「あの屋敷では、暗い顔で俯いていることが多いと聞いていたからな」
あの仮面がないだけで、エイブラムは黒いフードをかぶっている。
「腹が減っただろう、すぐに支度をする」
テーブルに紙袋を置き、エイブラムが中から薄いパンやソーセージを取り出した。戸棚をあけ、木製の皿とコップ、カトラリーを並べている。
「まだいいわ。夕食よりも話をして」
「……なら、準備をしながら話す。途中でキミのお腹が鳴るかもしれないからな」
「っな」
その物言いにカチンときた。
「デリカシーのない人ね! レディに向かってその言い方はどうなのかしら!」
彼に近づいて非難した。腕を組んだままで睨みあげると、どういうわけか彼が口元を綻ばせた。優しい笑みを見て、ポッと胸が熱くなる。
「な、なによ?」
「マリーンが……そうやって感情を見せてくれると安心する」
え……。
いまいち意味を理解できず、言葉が出なかった。
「あの屋敷では、暗い顔で俯いていることが多いと聞いていたからな」