囚われの令嬢と仮面の男
「……もしかして。それでさっきああ言ったの? マーサとの計画がだめになりそうだって」
「そうだ。元々彼女はキミの父親……ローダーデイル伯爵の持病を利用しようと考えていた。奥方が行方不明となった過去を持つ伯爵なら……、愛娘が同様にいなくなることで心臓を弱らせ、床に伏せる可能性があると踏んで……。けれど、そうはならなかった」
「……そう。それじゃあ。お父様は元気なのね?」
「ああ。マーサ・アリソンが伯爵の殺害を考えていたのかどうかはわからないが……。
もしも当主がそのような危篤に陥れば、共に裏庭の花壇を掘るよう頼んでいたんだけどな」
「裏庭の花壇を……"掘る"?」
なぜ、と疑問を口にしようとするが、先にエイブラムの声が遮った。
「マリーン、キミの花壇だったよね?」
「ええ、そうよ。今はデイジーの花が満開で咲いているはずよ?」
その花壇を掘るとなれば、あの愛らしい花たちは途端に居場所を失い、枯れてしまう。
エイブラムが優しく目を細めて私のすぐ側に回ると、そこに膝を着き、腰を落とした。
「ずっと黙っていて悪かった」
「……え?」
「そうだ。元々彼女はキミの父親……ローダーデイル伯爵の持病を利用しようと考えていた。奥方が行方不明となった過去を持つ伯爵なら……、愛娘が同様にいなくなることで心臓を弱らせ、床に伏せる可能性があると踏んで……。けれど、そうはならなかった」
「……そう。それじゃあ。お父様は元気なのね?」
「ああ。マーサ・アリソンが伯爵の殺害を考えていたのかどうかはわからないが……。
もしも当主がそのような危篤に陥れば、共に裏庭の花壇を掘るよう頼んでいたんだけどな」
「裏庭の花壇を……"掘る"?」
なぜ、と疑問を口にしようとするが、先にエイブラムの声が遮った。
「マリーン、キミの花壇だったよね?」
「ええ、そうよ。今はデイジーの花が満開で咲いているはずよ?」
その花壇を掘るとなれば、あの愛らしい花たちは途端に居場所を失い、枯れてしまう。
エイブラムが優しく目を細めて私のすぐ側に回ると、そこに膝を着き、腰を落とした。
「ずっと黙っていて悪かった」
「……え?」