囚われの令嬢と仮面の男
「そもそも十六年前。ローダーデイル伯爵がたった九歳の少年に手をかけたのは、マリーン……キミと親しくしていたからじゃないんだ」
「どういうこと?」
手にしたカトラリーを置いたとき、ビクッと肩が震えた。
……え。なに……??
どこか離れた場所で大きな物音がしたのだ。瞬時にエイブラムが眉根を寄せる。
立てた人差し指を唇に当てたまま、彼は険しい顔つきで立ち上がり、たったひとつの出入口を睨んだ。
椅子を引いて立ちあがろうとする私を静かに押しとどめ、「そこにいて」とささやき声で告げられた。
彼の手が机上にあるミルク瓶を掴んだ。
扉の向こうに続く石畳みの通路に、カツンカツンと何者かの足音が響く。エイブラムが扉の裏側になる場所へそろりと近づき、そこで息をひそめた。
私が彼を出し抜いたときと同じように、彼が息を詰めて扉の向こう側を窺っている。
突然ダン、と短く銃声が鳴った。
「っきゃあ!」
静寂の中での発砲に悲鳴がもれた。両耳を押さえたまま椅子からなだれるように落ちて、床に膝を着く。体を縮こめ、扉の方へ視線を向けた。
ギィ、と乾いた音がした。内側に開く扉を見て、鍵が壊されたのだと知った。
「どういうこと?」
手にしたカトラリーを置いたとき、ビクッと肩が震えた。
……え。なに……??
どこか離れた場所で大きな物音がしたのだ。瞬時にエイブラムが眉根を寄せる。
立てた人差し指を唇に当てたまま、彼は険しい顔つきで立ち上がり、たったひとつの出入口を睨んだ。
椅子を引いて立ちあがろうとする私を静かに押しとどめ、「そこにいて」とささやき声で告げられた。
彼の手が机上にあるミルク瓶を掴んだ。
扉の向こうに続く石畳みの通路に、カツンカツンと何者かの足音が響く。エイブラムが扉の裏側になる場所へそろりと近づき、そこで息をひそめた。
私が彼を出し抜いたときと同じように、彼が息を詰めて扉の向こう側を窺っている。
突然ダン、と短く銃声が鳴った。
「っきゃあ!」
静寂の中での発砲に悲鳴がもれた。両耳を押さえたまま椅子からなだれるように落ちて、床に膝を着く。体を縮こめ、扉の方へ視線を向けた。
ギィ、と乾いた音がした。内側に開く扉を見て、鍵が壊されたのだと知った。