島の家を相続した!!
叔母を追いかける海中電灯
「ね?凄くない?全然島の事、
知らなかったよねー。
みてみて、
これ!この一夜で沈んだ村!
集落をもっと奥に行った所に
あるんだよ?アトランティスよ!
昔は凪いだ海の底に鳥居が
見えたんだって。
漁師のお爺いの話だけれどね。」
冬になると
世界を震撼させる
何度目かのウイルス禍派が
襲来して、
島に渡るのが
再び難しくなっていた。
家に難病をもつ母親のベッドの
傍らで、
島の家の
公式LINEを充実させながら
写真の説明をする。
気がついたら、
島の家に泊まる際のノウハウや
ご近所さんとの交流について。
もちろん
集落の色んな説明も加えて、
内容は増えていく。
島の魚の旬とか、
グルメに行事。
集落の都市伝説ならぬ
島伝説ページもある!
「お正月開けたら、
なんとか1度島に行くよ。
そろそろまた空気の入れ替え
だけはしないとね。
2月の祭りも見たいし。
集落で1番華やかだって、
美容室のママが教えてくれた。
それにお墓も掃除しとかないと、
皆んな行くだろうしね。」
母は動かない表情だけれど、
興味深そうに
公式LINEの写真に
目が大きくなった。
10年。
母がパーキンソンを早くに
発症させて
わたしが家族と一緒に、
介護をしてきた時間だ。
最初に診断された時に、
言われのが10年ぐらいだと余命。
在宅リハビリ介護に
積極的に取り組んで、
何度か入院はしたけど
母は家の中で動けるぐらいに
なっていた。
「このお正月越えたら、
余命10年のジンクスを
乗り越えられる。嬉しいよね。
あ、せっかくだし
庭の祠にお酒持って行こう。」
発声訓練もしていて、
まだなんとか喋れるし、
認知も進んでない。
ベッドから、
島の家の用事をするのを
じっと見ては、
「すごい。いきたい。」
実際相続した本人の父は
ほったらかしなのに、
母は 精一杯の言葉で
褒めてくれた。
家のインテリアを
スクラップから選んでいると、
自分もギコチナイ手元で、
用意してあげたノートに、
自分が想像する島の家を
切り貼りしていた。
「かわいい。」
娘が推し活するアイドルとかも、
貼っていて怒られていたが。
「また皆に来てもらうから、
あたしが島に行っても、
大丈夫だからね。安心して。
ねえ、手土産は何のお菓子が
いいかな。喜ぶんだよね。
美味しいとか、綺麗な菓子が。」
叔母が亡くなって
島の家を片付けたり、
DIYをしたりで島に渡る時は、
もう一人の妹に世話を
お願いする。
「海、みたい。」
わたしが島の話をするからか、
母が珍しくダダをこねた。
「寒いよ?春になってから
車椅子に乗って、車で行こうか。
あー、でもさすがに
島は無理かな?近場の海でも
いい?皆んなで行こう。」
どうして、
もっと真剣に母の願いを
聞いてあげなかったんだろう。
3日間。
10年、奮闘してきた介護が、
3日間。
ウイルス禍で病院に空がなくて
救急で運べなくて、
急に体調を、崩した母は
目の前で
呆気なく
息を引きとった。
いつもと同じ朝。
父がいつも同じように
仕事へ行った10分後。
吸った息を吐かなくて、
一瞬で。
あと1時間で
運べるとなって、
母の手を祈るように握っていた。
少しでも
辛くないように。
なのに
目から30センチの顔から、
いきなり
魂が抜けた。
「ねぇ、急にゼイゼイ
言わないんだよ、
ねぇ、
なんで、どうしたんだろ。」
「お姉ぇ、死んでるんだよ。」
「なんで、なんで、
救急車呼んでよ。すぐ電話、
電話するから。、、、、
すいません、母が病院に行くのに、息をしてない、です。、
すぐ来て下さい。、、
お願いです。病院、今日、
入院出来るんです。
やっと
3日間、コロナで
何処も受け入れしてくれなくて、、
何十って夜通し病院に当たり
まわって、やっと 見つけて
、、
1時間後には入院するんです。
だから、運んで下さい、、」
「お姉ぇ、警察になるんだよ。」
頭のどこかで、
息をするのがつらそうな
母が
叔母の最後に
似ていて。
でも真剣に、まだ大丈夫だって
信じている自分が間違いなく
いて。
なのに
陸に居てるのに、
また
溺れるみたいに逝かせて
しまった。
どうして
気が付かなかったのか。
祖母が逝った時
母は夢で祖母をおんぶして
海に歩いたと話していた。
わたしは娘を生む時
やっぱり夢で、
海から娘の手を繋いで上がって
きた。
『今日も海が綺麗やのー。』
島民の挨拶は、
生まれる時も海があって、
逝く時も海があって、
その狭間で
平凡にでも見る海が
美しいことを、
愛でれる幸せを確かめる。
島民なのに泳げない叔母は、
魚を洗いに海に行って、
そのまま
幼なじみの目の前で
海に
落ちたのに。
『海に、いきたい。』
とぷん。
って。
一呼吸泡を溢して。
人が逝った。
有り難い事は、
電話で泣き倒し、来てくれた
救急隊員さん達。
ベッドから母を床に下ろして、
まるで納得させるみたいに
AEDを着けてくれた。
この人達の優しさと、
いざという時の自分の
分別のなさが
119のコールを
繋げにくくしているなら、
神様、すいませんでした。
ピーーーーーー
『電気ショックは不要です。』
ピーーーーーー
『電気ショックは不要です。』
ピーーーーーー
『電気ショックは不要です。』
寒海飛ぶトンビの泣き声に
聞こえる年滅音。
知らなかったよねー。
みてみて、
これ!この一夜で沈んだ村!
集落をもっと奥に行った所に
あるんだよ?アトランティスよ!
昔は凪いだ海の底に鳥居が
見えたんだって。
漁師のお爺いの話だけれどね。」
冬になると
世界を震撼させる
何度目かのウイルス禍派が
襲来して、
島に渡るのが
再び難しくなっていた。
家に難病をもつ母親のベッドの
傍らで、
島の家の
公式LINEを充実させながら
写真の説明をする。
気がついたら、
島の家に泊まる際のノウハウや
ご近所さんとの交流について。
もちろん
集落の色んな説明も加えて、
内容は増えていく。
島の魚の旬とか、
グルメに行事。
集落の都市伝説ならぬ
島伝説ページもある!
「お正月開けたら、
なんとか1度島に行くよ。
そろそろまた空気の入れ替え
だけはしないとね。
2月の祭りも見たいし。
集落で1番華やかだって、
美容室のママが教えてくれた。
それにお墓も掃除しとかないと、
皆んな行くだろうしね。」
母は動かない表情だけれど、
興味深そうに
公式LINEの写真に
目が大きくなった。
10年。
母がパーキンソンを早くに
発症させて
わたしが家族と一緒に、
介護をしてきた時間だ。
最初に診断された時に、
言われのが10年ぐらいだと余命。
在宅リハビリ介護に
積極的に取り組んで、
何度か入院はしたけど
母は家の中で動けるぐらいに
なっていた。
「このお正月越えたら、
余命10年のジンクスを
乗り越えられる。嬉しいよね。
あ、せっかくだし
庭の祠にお酒持って行こう。」
発声訓練もしていて、
まだなんとか喋れるし、
認知も進んでない。
ベッドから、
島の家の用事をするのを
じっと見ては、
「すごい。いきたい。」
実際相続した本人の父は
ほったらかしなのに、
母は 精一杯の言葉で
褒めてくれた。
家のインテリアを
スクラップから選んでいると、
自分もギコチナイ手元で、
用意してあげたノートに、
自分が想像する島の家を
切り貼りしていた。
「かわいい。」
娘が推し活するアイドルとかも、
貼っていて怒られていたが。
「また皆に来てもらうから、
あたしが島に行っても、
大丈夫だからね。安心して。
ねえ、手土産は何のお菓子が
いいかな。喜ぶんだよね。
美味しいとか、綺麗な菓子が。」
叔母が亡くなって
島の家を片付けたり、
DIYをしたりで島に渡る時は、
もう一人の妹に世話を
お願いする。
「海、みたい。」
わたしが島の話をするからか、
母が珍しくダダをこねた。
「寒いよ?春になってから
車椅子に乗って、車で行こうか。
あー、でもさすがに
島は無理かな?近場の海でも
いい?皆んなで行こう。」
どうして、
もっと真剣に母の願いを
聞いてあげなかったんだろう。
3日間。
10年、奮闘してきた介護が、
3日間。
ウイルス禍で病院に空がなくて
救急で運べなくて、
急に体調を、崩した母は
目の前で
呆気なく
息を引きとった。
いつもと同じ朝。
父がいつも同じように
仕事へ行った10分後。
吸った息を吐かなくて、
一瞬で。
あと1時間で
運べるとなって、
母の手を祈るように握っていた。
少しでも
辛くないように。
なのに
目から30センチの顔から、
いきなり
魂が抜けた。
「ねぇ、急にゼイゼイ
言わないんだよ、
ねぇ、
なんで、どうしたんだろ。」
「お姉ぇ、死んでるんだよ。」
「なんで、なんで、
救急車呼んでよ。すぐ電話、
電話するから。、、、、
すいません、母が病院に行くのに、息をしてない、です。、
すぐ来て下さい。、、
お願いです。病院、今日、
入院出来るんです。
やっと
3日間、コロナで
何処も受け入れしてくれなくて、、
何十って夜通し病院に当たり
まわって、やっと 見つけて
、、
1時間後には入院するんです。
だから、運んで下さい、、」
「お姉ぇ、警察になるんだよ。」
頭のどこかで、
息をするのがつらそうな
母が
叔母の最後に
似ていて。
でも真剣に、まだ大丈夫だって
信じている自分が間違いなく
いて。
なのに
陸に居てるのに、
また
溺れるみたいに逝かせて
しまった。
どうして
気が付かなかったのか。
祖母が逝った時
母は夢で祖母をおんぶして
海に歩いたと話していた。
わたしは娘を生む時
やっぱり夢で、
海から娘の手を繋いで上がって
きた。
『今日も海が綺麗やのー。』
島民の挨拶は、
生まれる時も海があって、
逝く時も海があって、
その狭間で
平凡にでも見る海が
美しいことを、
愛でれる幸せを確かめる。
島民なのに泳げない叔母は、
魚を洗いに海に行って、
そのまま
幼なじみの目の前で
海に
落ちたのに。
『海に、いきたい。』
とぷん。
って。
一呼吸泡を溢して。
人が逝った。
有り難い事は、
電話で泣き倒し、来てくれた
救急隊員さん達。
ベッドから母を床に下ろして、
まるで納得させるみたいに
AEDを着けてくれた。
この人達の優しさと、
いざという時の自分の
分別のなさが
119のコールを
繋げにくくしているなら、
神様、すいませんでした。
ピーーーーーー
『電気ショックは不要です。』
ピーーーーーー
『電気ショックは不要です。』
ピーーーーーー
『電気ショックは不要です。』
寒海飛ぶトンビの泣き声に
聞こえる年滅音。