闇と月


私が10歳の頃それは起こった。

その日は物凄く寒く、雪もしとしと降っていた。

運が悪く、色々重なってしまった、と言えばそうなのだろう。

兄と私の終業式の日と帰る時間がたまたま被り一緒に帰る約束をした。

しかし、その日私はマフラーをいつものいじめっ子達に隠されてしまい放課後探していた。

兄から貰った大切なマフラーだった。

ゴミ箱につてられているのをやっと見つけ、学校を出た時には予定よりも40分遅くなっていた。

私は急いで兄との集合場所である近所の公園へ向かっていた。

横断歩道へ差し掛かり、もう目の前に兄が見え待たせているという焦りもあり手を振りながら走っていた。

信号を確認するとまだ青がだったので急いで渡ろうとしていた時、急に兄はこちらへ走ってきた。

私は、兄も待ちきれず私の方へ向かって走ってきてくれていると思って笑顔で両手を振っていた。

そして、次の瞬間、兄は私を押し私の足元には真っ赤な生暖かい血が池のようになっていた。

あたりは悲鳴とざわめきが広がった。


< 108 / 152 >

この作品をシェア

pagetop