闇と月
しかし、私はその場で呆然と兄を眺めることしかできなかった。

それからどのように病院へ運ばれ、兄の葬式まで過ごしたのか記憶が残っていない。

辛うじて、覚えているのは病院のベッドの上で親に責められるのを医者が止めていたことだけだった。

そして、退院が決まりまた私の地獄が始まった。

私も含め、兄の死が受け入れられなかった。

そのうち両親は私に当たるようになった。

"お前が死ねばよかった"

"産んだのが間違い"

"気持ち悪い目で見るな"

そう言われ殴られ、蹴られ、煙草を押し付けられた。

それでも小学生である私はどうする事も出来ず、ただ泣き、謝り続ける事しかできなかった。

親も目に見えるところには傷が付かないようにしてたり、目に付くとこに傷が出来たら学校を休ませ1日中家に監禁されていた。

それが2年続いた頃にはもう痛みが分からなくなり、涙も枯れた。


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