闇と月


私は上に向かって手を伸ばすと何も無い世界から一変してそこは星と月の輝く夜になった。

この星空にはは見覚えがあった。

昔連にぃが私をバイクの後ろに乗せて星を見に行った時の星だ…

確かその時連にぃは何か言っていた。

思い出そうとすると隣から声が聞こえてきた。

「なぁ知ってるか?夜にも虹が見えるんだ。兄ちゃんは、1回だけ見たことがある。月虹っつてな、すっごく綺麗だった。昼に見える虹の何倍も綺麗で儚くて、二度と忘れないと思った。」

あぁ、そうだそう言ってた。

それで確か続きは…

「月は、星はいつだって兄ちゃんや柚華の頭上で輝いているんだ。でも昼間は太陽が全てを消してしまう。月は違う。暗闇を照らし、道を教えてくれる。明るすぎずそれでも暗くは無い。兄ちゃんはなそういう存在に、総長になりたいんだ。ただ守るだけでなく、優しく照らせるような総長に…って柚華にはまだわかんないか。でも、きっといつかわかるよ。」

そう、そう言ってた。

あの時はまだ意味がよくわかんなかったけど今ならわかる。

太陽じゃなくて月。

『連にぃ、今ならわかる気がするよ。』

私は久しぶりに蓮にぃの顔が見たくなり声のする方へ顔を傾けたが、そこには誰もいなかった。


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