闇と月


そうこう考えているうちに車の扉が開いた。

「お帰りなさい、坊ちゃん、柚華さん。」

扉を開けたのは凄く懐かしい顔だった。

黒いスーツを見に纏い、少し強面の顔をした彼は昔こー君がいない時よく遊んでくれた人だった。

『え、もしかしてホータロー?』

彼は、高梨奉太郎と言い鬼怒崎組の幹部を務めている人だったりする。

「はい、お久しぶりです。あの小さかった柚華さんが…」

ホータローは懐かしそうな、昔を思い出すような遠い目をした。

「柚華、奉太郎の事も知ってんのか?」

仁はそう少し呆れながら言い私を抱えたまま車から降りた。

『知ってるも何もよく遊んでくれた。てか、そんなことよりもおろして。』

仁に横抱きされたまま車から降りたため、所謂お姫様っ抱っこをされているのだ。

玄関前までそのまま行き、やっとおろしてもらえた。

玄関の扉を開けようと仁が手をかけようとしたが、その前に扉が横に開いた。

そして、誰かが私に抱きついてきた。

「お帰り、柚華ちゃん‼︎仁に、変な事されてない?もう体調大丈夫?」

『もう大丈夫。』

「兄貴、いつまで柚華にくっついてる。離れろ。」

「別にいいじゃねぇか、減るもんじゃないし。ね、柚華ちゃん。」

それよりもいつまで私たちは玄関にいるわけ…


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