闇と月


いつもの俺だったらすぐに調べさせる。

そもそも女なんて媚び売ってきてベタベタしてくるウザったいやつという認識だった。

なのになんでだ?

顔が綺麗だからか?

スタイルがいいからか?

いや、そんなやつ今までも散々見てきた。

俺らの周りは顔に自信ある女ばかりだったしな。

でもこいつはその誰よりも綺麗で儚い気がした。

今日の俺はどこかおかしいのかもしれない…

そもそもこいつに出会った日からおかしいのかもしれねぇな。

だって初対面の女を倉庫に連れてこうなんて普段だったら思わねぇ。

しかも何か隠してる女なんて絶対連れてこねえし相手にもしない。

なのに俺は連れ来た…

しかも信じてぇなんて思ってる。

やっぱり俺おかしいのかもしれねぇ。

そういえば、昔聞いたことがある。

満月の夜は人間の精神にも影響がでるとか…

そう思い窓の外にある月を見たら満月だった。

「仁、身元だけでも調べた方がいい。どっかのスパイっていう可能性もある。滝川さんとの関係も気になるしな。」

確かに身元もわかんねぇまま置いとくのは不味いかもしれねぇ。

それでも俺は…

「俺はあいつを信じたい。それに背負ってるものもあいつの口から聞きてぇ。」

そう思っちまうんだよ…


< 67 / 152 >

この作品をシェア

pagetop