闇と月
ふと、どこか遠いところで名前を呼ばれている聞かした
誰?
私を呼ぶのは誰…?
この香り…
蓮にぃ?
違う。
この声は…
「……か、…ずか、ゆ…ずか。」
これは…
仁…なの?
なんで?
私達なんでもないのに。
なんでこんな苦しそうな声で私を呼ぶの?
「ゆ…か、柚香!!」
私のせい?
私のせいで仁はそんな辛そうな苦しそうな声を出しているの?
どこにいるの?
手を伸ばす。
あぁ、仁の顔が見たい…
なんでこんな事思うんだろう…
でも仁に心配かけたくない。
誰かが私の手を握って引っ張った。
仁の手…?
泣かないで、
私はその暖かくて、私より大きい手を握り返した。
ここにいるよ、と。
『じ、ん…』
ピッピッピッ…
「柚華、俺の事わかるか?」
白い天井。
消毒液の匂い。
ここは…
病院…?
上から覗き込む心配で歪む仁の顔。
私は思わず腕を伸ばしていた。