Candy Spoon
葵さんから、この前のお礼がしたいと連絡が来た。
お礼なんて申し訳ない、と伝えても、葵さんは引く気配がない。
せっかくだから、葵さんと一緒にどこか行きたい。
悩んだ私は、美術館に一緒に行きたいと伝えた。
そう伝えた後に、美術館にいるときに、また葵さんのファンに会ってしまったらややこしいことになってしまうということに気づいて、電話で葵さんに聞いてみた。
「一緒に美術館に行きたいなんて言っちゃいましたけど、またファンの子に会っちゃったら、葵さん困りませんか?」
「ああ、大丈夫。俺、彼女いることになってるみたいだから。バンドメンバーにもそう思われてる」
なんと、あのカフェでの出来事がきっかけで、彼女認定されてしまったみたいだ。
「えっ…否定しなくていいんですか?」
「そんなことになってたの最近気づいた。でもよく考えたら向日さんに迷惑かけるし…みんなには否定しといたほうがいいか」
葵さんとカフェに行ったのは半年以上前のことだ。
ということは半年以上、私は彼女認定されていたということ…
「いや!いいんです!別に私は…」
と言いかけて最後には、ごにょごにょとしてしまった。
彼女認定のままでいいなんて言ってしまったら、葵さんのことを好きなんだと思われてしまう。
「そっか」
葵さんは私の反応を気にする様子もなく、美術館の話に戻る。
「美術館にはポタちゃんも来るんですか?」
「どうだろう。実家に帰ってるかも」
ポタちゃんは実家に帰っていることが多い。
そういえば葵さんが風邪をひいていたときも、実家に帰っていたんだっけ…
葵さんと2人きりの美術館は楽しみのような、緊張のような、不安なような…。
※※※
「ましろちゃんと一緒にどこか行くポタか〜?」
「ひみつ」
「ポタ〜(よしよし、この調子ポタ)」