Candy Spoon
3杯目
私は美術館の雰囲気が好きだ。
しんと静まり返った室内とは反対に、飾られている絵画は私に語りかけてくる。
1つ1つ、じっくり見ていると、いつの間にか時間が過ぎていた。
「ごめんなさい。ゆっくり見過ぎちゃって…時間かかっちゃいました」
私が好きな西洋画ということもあって、楽しみ過ぎてしまった。
「ううん、楽しめたみたいでよかった」
葵さんは気にする様子もなく、コーヒーを口にする。
休憩がてら入った喫茶店は、いい雰囲気だ。
私も紅茶を啜る。
沈黙が続き、葵さんが口を開いた。
「この後も時間ある?」
意外な質問だった。
もっと葵さんと一緒にいたい。
「もちろんです!」
喫茶店を出る頃には、日が落ちて星が見え始めていた。
冬が近づいているせいか、夜が近づくと肌寒い。
私がぶるりと身体を震わせると葵さんが私の肩に上着をかけてくれた。
葵さんが寒くなってしまうと思い断ったが、「俺暑がりだから」と言い返されてしまった。
「どこに行くんですか?」
隣同士で歩いていると時々、手が触れそうになる。
ドキドキしているのは私だけなのかな。
「んー、秘密。景色が綺麗なとこ」
葵さんは楽しそうに笑う。