Candy Spoon

予想以上に大きな音と、カラフルな照明が会場内を照らす。
大きな音にびっくりして、体がビクッとなる。
ライブハウスの中は、思っていた以上に人がひしめきあっていた。
最後列に立っていると、ポタちゃんは私の近くを飛び回る。

ステージを見ると金髪のボーカルらしき人がマイクの前で何やら叫んでいた。

「お前らーー!もっと声出せんだろーー!」

その言葉に答えるように、周りの人々は大きな声援を送る。
この大人数の中に『葵くん』とやらはいるのだろうか。
どうやって探せばいいんだろう…と絶望的な気分になっていると、

「葵くん、いたポタ!」
とポタちゃんが私の肩の周りで、ぴょんぴょんと飛び回った。

ポタちゃんの見つめる先には、ステージの上でギターを持つ細身の男の人の姿が見える。
今はボーカルの人にスポットライトが当たっているせいか、ギターの人の顔は暗くてよく見えない。

見ている限り、ポタちゃんはあまり遠くまで飛べない様子だ。
ステージの上の男の人にポタちゃんを引き渡すには、距離が少し遠い。
なにより、こんな大勢の観客の前で、ステージの上にいる人と話すのは至難の業だ。

どうしようか迷っていると、次の曲が始まってしまった。
バラードのようで周りが急に静かになった。

ステージを照らす照明から、ギターを弾いている人『葵くん』とやらの姿がはっきりと見えた。
細身のシルエットにストレートの黒髪。
きれいな横顔。

その姿を眺めながら流れる曲たちを聞いていると、いつの間にかライブが終わっていた。



自分の周りをよく見渡すと、女の人が圧倒的に多い。

「遥斗くんかっこよかった〜!金髪似合う〜」

「葵くんもかっこいいよ〜今日もクールだったね〜」

やはり、ルックスも相まって、女性ファンが多いみたいだ。


私は初めて生で聞いたバンドの演奏に感銘を受けていた。
なにより曲がすごくいい。
初めて聞いた曲なのに、ライブが終わっても、曲が頭から離れない。
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